河南嵩山少林寺発祥の少林武術と日本への普及

国際大会・演武会 – 世界に広がる少林功夫と日本の参加

少林武術は今や世界的な文化現象となっており、日本もそのグローバルなネットワークの一部として積極的に関与しています。国際大会への参加や武術演武会での交流を通じ、日本人は少林功夫の国際コミュニティに貢献し、また恩恵を受けています。

国際少林武術大会への参加

中国では1991年から「中国鄭州国際少林武術節」が隔年で開催されており、世界中の武術家が嵩山少林寺の地に集う一大イベントとなっています[参考]。そのモットーは「以武会友、共同进步」(武を以て友と会し、ともに進歩する)であり、競技だけでなく観光・文化交流も含めた総合的なお祭りです。日本からも毎回、少林寺拳法や中国武術の愛好者チームが参加しています。例えば日本武術太極拳連盟は有志の代表団を送り、伝統拳や器械の演武部門にエントリーしています。大会では各国の選手が日頃鍛えた拳法・棍法を披露し合い、交流演武や親善試合も行われます。現地報道によれば、第12回(2018年)武術節には36の国と地域から1500名以上の選手が参加し、少林寺の山門前で荘厳な開幕式が執り行われました(少林武僧の集団演武に各国代表団が続々と加わる様子が伝えられました)。日本人参加者のインタビューでは「世界中のカンフー仲間と交流でき、技術だけでなく友情を得た」と語られており、国籍や言語を超えた武術愛好者同士の連帯感が育まれているようです。こうした国際武術節への参加は、日本にいながらでは得られない刺激とネットワークをもたらし、日本の少林武術界に新風を吹き込んでいます。

世界武術選手権とアジア大会

少林武術を含む中国武術は、スポーツ競技としても国際大会に組み込まれています。アジア競技大会では1990年北京大会から武術が正式種目となり、日本代表も太極拳や長拳、散打で出場しています。メダル獲得には至っていませんが、日本人選手が演武で健闘する姿は中国メディアでも紹介され、日中の友情物語として報じられることがあります。また、2年に1度開催される世界武術選手権大会(IWUF主催)には日本からも毎回選手団が送り込まれ、前述の通り2017年大会ではメダル獲得者も出ています[参考]。さらにユース世代では、2019年の世界ジュニア武術選手権で日本のチームが団体長拳で銅メダルを獲得するなど[参考]、若手の活躍も目立っています。これらスポーツ大会への参加は、国内の競技人口拡大にもつながり、各地で武術太極拳クラブやジムが増える一因となっています。実際、日本武術太極拳連盟の登録会員数は現在約15万人に上り、その中には少林拳系種目の練習者も含まれます。スポーツ庁も武術太極拳を生涯スポーツの一環として奨励しており、高校総体(インターハイ)でもデモンストレーション競技として武術が披露されたことがあります。将来的にオリンピック正式種目化の可能性も取り沙汰されており、日本の少林武術コミュニティもその日を夢見て競技力向上に努めている状況です。

海外公演と武僧団ツアー

少林寺の武僧団(少林武术表演団)による海外公演も、日本でたびたび行われてきました。1980年代以降、少林武僧団は「文化使節」として世界60以上の国・地域で延べ1000回以上の公演を行っており[参考]、日本も主要な巡業先の一つです。特に1990年代から2000年代初頭にかけては、「中国功夫ショー」と題した武僧団公演が東京や大阪などで開催され、大勢の観客を集めました。ある年の東京公演では少年僧による二節棍の妙技や、高僧による針でガラスを割る絶技(針穿玻璃)などが披露され、メディアも「まさに秘技!観客総立ち」と報じました。武僧団公演はエンターテインメント性が高く、日本の人々に少林功夫の超人的な身体能力を強烈に印象づけました。一部では「演出が大げさ」「修行というよりサーカス」との批評もありますが、多くの観衆は純粋に拍手喝采を送り、中国文化への関心を高める良い機会となっています。また、近年は地方自治体のイベントに招かれるケースも増え、2019年には長野県某市の国際交流フェスティバルで在日少林武術団が演武を披露し話題を呼びました。武僧団OBが日本在住となり、自ら少林功夫のツアー公演を企画する例もあり、少林武術のショービジネス的展開も進んでいます。

少林寺拳法の国際活動

日本発祥の少林寺拳法もまた、国際展開を進めています。1950年代から海外支部設立が始まり、現在では世界20か国以上に支部が存在します。世界大会(少林寺拳法世界大会)は1997年に第1回が開催され、以後4年毎に各国持ち回りで実施されています。2017年のインドネシア・バリ大会には16の国・地域から約1000人の拳士が参加し、日本以外の国の選手も上位に食い込むほど技術水準が向上しています。こうした大会に中国少林寺からのオブザーバー参加もあり、少林寺拳法と少林功夫の間でゆるやかな連携が見られます。実際、2017年世界大会では開会式に嵩山少林寺の僧侶が招かれ演武を披露しました(両拳法の「少林」ブランドが一堂に会する象徴的シーンでした)。世界中の少林寺拳法団体も、起源である中国少林寺への敬意を持っており、各国の道院代表が中国を訪問して少林寺に奉納演武を行うこともあります。このように、国際社会において「SHAOLIN」の名は日本と中国双方の武術コミュニティで共有財産のように扱われ、平和と友好のメッセージを発信する媒体となっています。

少林功夫という共通言語は世界中の人々を惹きつけています。日本にとっても、少林武術は中国との友好交流の文脈で自他共に誇れるコンテンツであり続けています。国際大会や演武会で培われた友情の輪は、平和と協調の精神につながる財産と言えるでしょう。